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 なんと迫力のある言葉であろう。  身内のものはそれとなく知ってはいたが、改めて彼女の口からこの言葉を聞いたとき、子のない妻の哀れさを感じた。同時に、その言葉には相手の女性を十分説得させるだけの重みがあった。  結婚この方、私どもは子宝に恵まれなかった。だからあなたとの間にも子供が生まれるはずはない。そう言っているうちに、再び感情がたかぶり、腹が立ってきたのだろう。 「でたらめを言うのも、いい加減にしなさい」  と最後は相手を怒鳴ってしまったのである。  切り札が出されたのだ。  ところが愛人もさるものである。ひるむどころか、かえって闘志をみなぎらせて反撃に出たのである。あなたが今、認知してくれなければ、くれないでもよいのです。私は裁判所で親子鑑定していただきますから結構です。多分こんなことになるだろうと思って、弁護士さんと相談して手は打ってあります、というのである。  なるほど、女だけの知恵ではなかった。  飛び込みの現場で、私はパパの骨と肉を拾って持っています。これを裁判所に提出して、血液型を鑑定してもらい、親子関係をはっきりさせます、というのである。  万事用意周到な運びで逆襲してきた。  自分の腹を痛めた子供がここにいる。  母は強かった。  熾烈《しれつ》な女の対決に相談相手にと残った身内の男たちも、意外な成り行きに、なすすべもなかった。  結局、民事裁判にもつれ込んだ。裁判所は、愛人側から出された骨と肉を、ある著名な法医学者に鑑定を依頼した。  鑑定はまず骨と肉が獣のものではなく、人間のものであるか否かから始められた。数ヵ月後、結果は鑑定書として裁判所に送られてきた。  人間の骨と肉であり、骨は扁平《へんぺい》で骨盤を形成する腸骨の一部分と推定された。血液型は骨、肉ともにB型であった。つまり支店長はB型と判断された。なお母親の愛人はO型で、その男の子はB型であった。  したがってB型の支店長とO型の愛人から、B型の子供が生まれても矛盾はなかった。しかし、支店長の子供であると判定するわけにはいかない。世にB型の男は支店長以外にごまんといるからである。  たとえば、子供がA型であれば、BとOの夫婦からA型の子供は生まれないから、この場合は完全に否定することができる。血液型はいわば否定の学問で、肯定の学問ではない。鑑定結果は、親子関係があってしかるべきである、ということになったのである。
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