收藏

ヴィトン バッグ ルイヴィトン LOUIS VUITTON アルマPM M91583 モノグラム ヴェルニ ローズヴェルール L編集

 権力をもっている者は、強い。バルサは、それをいやというほど知っていた。たしょう腕がたつからといって、たったひとりで、大きな権力をもつユグロを、どうこうできるはずもない。……それができるなら、ジグロも父も、そして自分も、こんな人生はたどらなかった。 (できるのは、殺されずに逃げることだけ……か。)  ジグロとともに、逃げつづけて生きた長い歳月。――やつらの思いどおりに殺されることなく、生きのびることだけが、たったひとつの抵抗のあかしだった。 (なんと、ちっぽけな人生。)  ふいに、つよいかなしみが、胸にこみあげてきた。 (なにをうみだすでもなく、なにをつくるでもなく、ただひたすら、フクロウからのがれる岩ネズミのように、生きのびるためだけに、生きてきたなんて……。)  そのとき、バルサは、むこうの岩陰に、小さな光をみたような気がした。 (……蛍?)  一瞬、そう思ったが、こんな寒い季節に、しかも、水辺もない岩山に蛍がいるはずもない。うす青い光が、すうっと、かなりのはやさで残光《ざんこう》の尾をひいて走りだした。トン、トン、とはねとぶように岩の上にあがったかと思うと、べつの岩にうつっていく。  ふと、バルサの脳裏に、おさないころ、母からきいた、むかし話がよみがえってきた。 [#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]  ――月のうつくしい夜には、けっして岩場にちかよってはいけないよ。月のうつくしい夜は、ティティ・ラン〈オコジョを駆る狩人〉が、狩りをする夜だから……。ティティ・ランは、小さいが、おそろしい狩人。狩りのじゃまをしたら、呪いをかけられて、気がくるってしまうのよ。―― [#ここで字下げ終わり] (……まさか。)  よくみると、光は、あちらこちらに、いくつもうごいている。バルサは、気配を殺して、じっと、その光をみつめていた。ふつうなら暗くてみえないはずの光景が、毒にやられているいまは、うかびあがってみえた。……それは、夢のようにふしぎな光景だった。  むかいの岩の上に、小さなオコジョがたっていた。月の光が、霜《しも》のように、そのなめらかな毛皮を光らせている。その背に、小さな小さな人がまたがっていた。右手に長くほそい槍をもち、左手に長い柄のついた明りをもっている。よくみると、長い柄にみえたのは、花のくきだった。そのさきにぶらさがっている花のなかには、いったいなにがはいっているのか、花全体が、ポウッと、あわく青く光っていた。  しばらく、風のにおいをかぐように、オコジョも小人も顔を上にあげていた。バルサは、自分のにおいが彼らにとどかないよう、いのった。  と、オコジョと小人が、どうじに獲物に気づいたようだった。さっと彼らが緊張するのがわかった。みると、青い光にひかれたのだろう、コガネムシが、彼らのほうへとんでくる。と、目にもとまらぬはやさで、小さな狩人の槍が、さっとコガネムシをさしつらぬいた。
表示ラベル: