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ルイヴィトンアルマmm編集

 俺も驚いていた。他の店から取り寄せるために代金を支払っている。とんでもない高額ではなかったが、ただ同然というわけでもない。 「駄目よそんなの。ちゃんと払うわよ」 「いいえ。今回は差し上げます……お祝いに」  紙幣を出そうとしていたしのぶの手が止まる。困り顔で他の三人を見回してから、栞子さんに弱々しく微笑みかけた。 「分かってたのね」 「やっぱり、そうでしたか」  俺には分からなかった。しのぶの隣にいる坂口も怪訝そうにしている。 「なんで分かったの? ……いいから、教えて」 「……最近、おやめになったものが多いと思ったんです。煙草とお酒、ヒールの高い靴……それに、あまりご気分もよくないみたいですし。わたしの母にも、そういう時期があったんです……妹が生まれる少し前」 「あ……」  つい声を上げてしまった。その言葉でようやく俺にも理解できた。栞子さんが本の謎以外に気にかけていたのは、このことだったのだ。  しのぶはカウンターに本を置き、表情を改めて自分の夫と向かい合う。坂口はサングラスの下で大きく目を見開いている。真相に気付いたようだった。 「まさくん、あたし、赤ちゃんができた」  俺は今年最初にしのぶと会った時の会話を思い出していた。 (吸うのやめたの。その方がいいと思って……色々言われてるし)  煙草の値上げの話かと思いこんでいたが、あれは胎児への影響のことに違いない。最初から本人がヒントを口にしていたわけだ。 「ずーっとできなかったから、できないもんだと思ってたのよね。そういうの頑張る年でもないし……でもほら、ここ何ヶ月かであたしたち何度か旅行に行ってたでしょう。旅先だと結構盛り上がっちゃって、ねえ……」  しのぶは両手の人差し指を合わせてぐいぐい押した。うなずきながら聞いていた栞子さんの顔が真っ赤になる。
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