ルイビトンwiki
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null 池内は私の襟を掴んで立上がらせた。  私は長屋風の建物に連れていかれた。そこは広い道場と、十畳ほどの部屋が七つついている。  道場には、私に傷を負わされた四人をのぞく近藤の親衛隊員が全部といっていいほど揃って私を待ちうけていた。殺気だった眼付きだ。 「これが北見だ。入門を許された。みんなで順番に|挨《あい》|拶《さつ》してやれ。まず、俺が最初にやってやる——」  池内は男たちに向けて言った。私に向き直り、 「歯をくいしばってろ」  と冷笑してから、私の鼻柱に|渾《こん》|身《しん》の力をこめた|拳《こぶし》を突きだした。  私は反射的に横に跳んだ。そしてこれも反射的に、右フックを池内の胃に肘まで叩きこんだ。  池内は胃が裏返しになったような呻き声をあげて膝をつこうとした。こうなったら仕方無いから、私は池内の髪を左手で掴んで引起こし、その内ポケットから九四式の自動拳銃を奪った。九四式の安全装置を外し胆汁と胃液を逆流させる池内の口に銃身を突っこんだ。 「ふざけちゃいけねえ。さっきのは、売られたケンカを買っただけの話だ。それだからと言って俺が袋叩きになるのは御免だぜ」  と、言う。  男たちは|茫《ぼう》|然《ぜん》としていた。拳銃を口に突っこまれた池内は、|蛙《かえる》の腹のような顔色になって全身を|痙《けい》|攣《れん》させている。ズボンの|股《また》に黒いシミがひろがっていく。 「わ、分かった。さっきの事は水に流す。参謀からハジキを離してくれ」  班長の一人で、頬のホクロに長い毛がはえている男が、悲鳴に似た声を出した。 「分かってくれたら文句は無い。ただし、俺だって射たれるのは嫌だから、このハジキは預かっとくぜ」  私は言って池内を突きとばした。拳銃は銃身を自分の安物の服で|拭《ぬぐ》ってポケットに突っこんだ。ポケットのなかでも握りしめる。  池内は|仰《あお》|向《む》けに倒れ、テンカンにかかったように焦点の合わぬ瞳を剥いて口から|泡《あわ》を吹いている。 「年寄りの冷や水ってのは確かに体によくないらしいな。さてと、俺の寝床はどこだい?」