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2015-01-23 22:34    miu miuスタッズ財布
「イギリスの年寄りは嵐の中で、二十ヤード離れたところで恋人達が囁《ささや》いているのを、神様のように聴き取ってしまうのよ」  そんな凄い能力も人の声だけで、ツェッペリンの爆音も、潜水艇のスクリュー音も聞こえないのだから呆れてしまうとケイトは言って喉で笑った。  ケイトがひとりで入っている船室は、普段は病室に用意してある部屋で、通路の突き当りにある。  ドアを開けておいても、外人乗客に見られたら何を言われるか分からないと、河田が拒んだら、ケイトは、そんな可能性より自分の問題は重大で、生命にかかわると言う。  ケイトはウェールズの炭鉱町で、貧しい炭鉱夫の家に生まれた気の強い女だ。 「貴方は、とるに足りない噂を怖れて、私の相談を受けにドアを開けた船室に来ないとおっしゃるのですか。あの老婆の仮病とは違って、生命の問題なのです」  ケイトはキツい口調でそう言うと、悲しそうに微笑んで見せると、日本の紳士は苦しんでいる女を、きっと救けて下さるでしょうと呟きながら床に目を落した。 「救けて下さい。貴方しか相談出来る方がいないのです。私、今すぐにでも海に身を投げてしまいそう。どうぞ貴方、力になって下さい。お困りになるようなことではありませんが、誰に知られてもいけないのです」  ケイトは、前歯で下唇を噛むと、どうか夕食が済んだら自分の船室にいらして下さい。後生ですからと声を詰らせる。 「明日の朝食後なら士官食堂を人払い出来ますから、そうしませんか。いくらドアを開けておいても、貴女のような美しい方だと、私は風がドアを閉めないかと願ったりするようになって、職を失いかねません」  河田はお世辞と冗談を一緒に言って、若いイギリス女の沈んだ気持ちを、明るく変えようと思った。ケイトは顔をほころばすと、急に朗らかな声で、至急と申しあげたのを忘れてしまったようね……と言って、夕食の後までだって手遅れになりかねないのだと声をひそめる。 「本当に誰にも知られたくない大変なことなの。恥ずかしいけど貴方にだけは申しあげておかないといけないわ。なんとか出来るのは貴方の他に誰もいないのよ。相談に乗って力になって下さい。救けて下さい。お願いです」  河田は、自分に出来ることであれば、お力になるのが職務だと答えたので、ケイトはちょっと膝を折って、心から有難く思うと呟いたのだが、涙がひと粒、目からこぼれると、頬で弾んで通路の床に落ちた。ケイトはくるりと後ろを向くと、急ぎ足で通路を遠ざかって行く。  サロンに戻りながら河田は、ケイトの相談の内容を考えたのだが、思い当たることがなくはなかった。ケイトの船室は一番離れた端にあって、隣はもう一室病室になっている。  病人が出た時のために二室用意してあるのだが、病室だから鍵《かぎ》は普段から掛けてない。  パイプ・ベッドが三台置いてあるこの病室に、誰か外人乗客、それもケイトと同国人のイギリス人が、女を連れ込んだのだろうと河田は思った。  インド人や中国人の可愛い少女のメイドが何人か一緒に乗船しているのだが、主人も他のイギリス人乗客も、無愛想に命令するか叱りつけるだけで、河田の目には人間扱いをしていないように見えた。  日本の主従の関係とは全く異質な、人間離れのした冷酷さが感じられて、不気味に思えて背筋が寒くなったほどだ。