シャネル財布人気ランキング
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null それにしても、財布も腕時計もすべてそのままだったのには、あらためて日本の素晴らしさに、私はしびれてしまったのでした。 [#改ページ]

 私の腕時計コレクション  私は腕時計が大好きです。  最初に自分の時計を手に入れたのは、中学に入った時ですから、あれは昭和二十五年のことで、母が買ってくれました。  セイコーの七石で、中三針の秒針が赤く塗ってあったのは、ハッキリ覚えているのですが、これを書いていて、手捲きだったのか、それともオートマティックだったのか、どうしても思い出せないのです。  その頃五歳年上の兄は、ヨーロッパで父に買ってもらったモバードをしていたのですが、それがとても|羨《うらや》ましかったのを、今でも覚えているのですから、私の人生は|嫉妬《しつと》で支えられて来たと言っても、そんなに|大袈裟《おおげさ》ではありません。  十四歳でチンピラになると、その頃のヤクザのユニフォームだった黒のシングルのスーツを作って、次は腕時計を漁りました。  買うんじゃありません。  弱そうな奴が、私の目を引くような腕時計をしていると、露路に引っ張り込んで恐喝するのです。  昭和二十年代のその頃は、今よりずっと世の中が|荒《すさ》んでいて、弱肉強食の時代でした。  相手から巻きあげるだけではなくて、もっと強い奴に目をつけられると、ぶん殴られて奪い取られてしまうのですから、これはもうアフリカのサバンナや海の底と少しも変わりません。  ベンラス、ウォルサム、ブロバーといった、アメリカ系の腕時計が、チンピラの私には、とても素敵に見えたのです。